1. 「経営事項審査」って何? なぜ必要なの?
こんにちは、マムアン行政書士事務所です。
「公共工事に入札したい!」 「せっかく建設業許可を取ったから、もっと大きな仕事に挑戦したい!」
そう考えている建設会社さんも多いのではないでしょうか。
公共工事は、安定した売上や会社の信用アップにつながる、とても魅力的な仕事です。でも、参加するには少し特別な準備が必要です。その準備の第一歩が、今回お話しする「経営事項審査」です。
この記事では、公共工事への扉を開くために欠かせない「経営事項審査」について、何をどうすればいいのか、分かりやすく解説していきます!
「経営事項審査」は、略して「経審(けいしん)」とも呼ばれます。これは、国や県、市町村などの公共工事を直接請け負う場合に、必ず受けなければならない会社の「健康診断」のようなものです。
役所が公共工事を発注する時、「この会社は、ちゃんと工事を最後までできるかな?」「経営は安定しているかな?」といったことを確認します。そのために、会社の経営状況や技術力などを客観的に評価し、点数をつけるのが経審なんです。
この点数(「P点」と呼ばれます)が高ければ高いほど、公共工事の入札に参加する時に有利になります。つまり、公共工事に挑戦したい会社にとって、経審を受けることは必須の手続きというわけです。
2. 経審を受けるための「3つの前提」を確認しよう
経審を受けるには、まず次の3つのポイントをクリアしている必要があります。
建設業許可を持っていること
これは最も基本的な条件です。経審を受けられるのは、建設業の許可を持っている会社だけです。
「許可はあるけど、関係ない工事の経審は受けられる?」と疑問に思う方もいるかもしれません。残念ながら、例えば「内装工事」の許可しか持っていない会社が、「電気工事」の経審を受けることはできません。もし「電気工事」の経審を受けたいなら、その会社の許可の中に「電気工事業」が入っている必要があります。
経審を受けたい工事の種類(業種)の許可を、あなたが持っているか、まず確認しましょう。
「決算変更届」をちゃんと出していること
経審では、直前の決算期(会社の会計の区切り)の売上や会社の財産状況を審査します。そのため、その決算が終わった後に「決算変更届」という書類を、毎年きちんと提出しているかどうかがとても重要になります。
もし、この「決算変更届」を1年でも出し忘れていると、経審は受けられません。役所によっては、決算変更届の控えがないと、経審の予約すらできないところもあります。
会社の決算が終わったら、忘れずに決算変更届を出すようにしましょう。
決算期を把握してスケジュールを立てること
経審は、決算が終わってからでないと受けられません。そして、決算が終わってすぐに受けられるわけでもありません。
まず、会社の決算が終わって、税金の計算を済ませ、税務署に申告します。その後、決算変更届を出し、さらに次のステップ(後述の「経営状況分析」)を終えてから、ようやく経審の申請に進めるのです。
自分の会社の決算期がいつなのかを確認し、そこから逆算して、各手続きのスケジュールを立てておくことが大切です。急に公共工事のチャンスが巡ってきても慌てないよう、計画的に準備を進めましょう。
3. 経審申請の「3つのステップ」と流れ
経審を受けるには、基本的に次の3つのステップを踏みます。
ステップ1:決算変更届を出す
経審を受ける一番最初のステップは、「決算変更届」を出すことです。これは、毎年会社の決算が終わるたびに、過去1年間の会社の工事の実績や財産状況などを役所に報告する大切な書類です。
この届出の金額は、すべて消費税抜きで書きます。また、提出する「工事経歴書(工事の記録)」は、経審を受ける場合とそうでない場合とでは書き方が少し違うので、注意が必要です。
もし、この決算変更届を出し忘れている年があると、その後の経審は受けられません。過去に漏れがないか、しっかり確認しておきましょう。
ステップ2:「経営状況分析」を申請する
決算変更届を出したら、次は「経営状況分析(けいえいじょうきょうぶんせき)」の申請です。
これは、会社の財務状況(お金の状態)が健全かどうかを専門機関に分析してもらう手続きです。国に登録された「経営状況分析機関」というところが、会社の決算書などを見て、会社の経営が安定しているかなどを評価し、「Y点」という点数を出してくれます。
経審の申請には、この経営状況分析の結果(結果通知書)が必ず必要になります。分析機関によって、かかる費用や日数が少し違うので、自分の会社に合ったところを選びましょう。早ければ数日で結果が出ることもあります。
ステップ3:「経営事項審査」を申請する
経営状況分析の結果通知書が届いたら、いよいよメインの「経営事項審査」の申請です。これは、建設業許可を出している役所(都道府県や国土交通省)に書類を提出します。
経審では、会社の規模(売上など)や、技術者の数、社会貢献度などが評価され、それぞれ「X点」「Z点」「W点」といった点数がつきます。これに、さっき出た「Y点」を合わせて、最終的な「総合評定値(P点)」という点数が出ます。このP点が、公共工事の入札で会社の強みとなる点数です。
経審の申請は、多くの役所で事前の予約が必要です。特に年度末などは混み合って、予約が1ヶ月以上先になることもあります。公共工事の入札に間に合うように、余裕を持って予約を取りましょう。
4. 経審の点数を左右する「工事の記録」と「技術者」
経審で高得点を取るためには、特に次の2つの要素が重要になります。
工事の記録(工事経歴書)を正確に書く
経審で提出する工事経歴書には、独自の書き方のルールがあります。
- 元請け工事の売上合計の7割を超えるまで、元請け工事を記載します。
- その後、元請け・下請けに関係なく、全体の売上合計の7割を超えるまで工事を記載します。
このルールに沿って書く必要があります。
さらに、このルールに基づいて書いた工事経歴書の中から、特に金額が大きい上位3件の工事については、その内容を証明できる書類(契約書、注文書と請書、請求書と入金がわかる通帳など)を必ず用意しなければなりません。
もし工事経歴書の記載に間違いがあったり、証明書類が足りなかったりすると、審査が進まなくなったり、点数が下がったりすることがあります。過去の工事に関する書類は、日頃から大切に保管しておきましょう。
技術者の数を増やす・資格を取る
経審では、会社にどれくらいの技術者がいるか、どんな資格を持っているか、という点も評価されます。
- 二級よりも一級、一級よりも「監理技術者証」を持っている技術者がいると、より高い点数がつきます。
- 1人の技術者が、複数の業種の資格を持っている場合、最大2業種まで技術者としてカウントできることもあります。
ただし、経審で点数が上がる技術者は、審査の基準日(決算日)の時点で、会社に雇われてから6ヶ月と1日以上経っている人でないと認められないので注意しましょう。
将来的に会社の許可業種を増やしたり、事業の幅を広げたりすることにもつながるので、技術者の資格取得を会社として応援するのも良い方法です。
5. 経審の結果通知書には「有効期限」がある!
経審を受けてもらえる「経営規模等評価結果通知書総合評定値通知書」(通称:「結果通知書」)には、有効期限があります。この有効期限は、会社の「決算日」から1年7ヶ月です。結果通知書を受け取った日ではないので、間違えないようにしましょう。
例えば、3月31日決算の会社なら、翌年の10月31日が有効期限となります。
この有効期限が切れてしまうと、公共工事の入札に参加できなくなります。もし入札で落札できたとしても、契約を結べなくなるという大変な事態に発展する可能性もあります。最悪の場合、一定期間、公共工事の入札に参加できない「指名停止」処分を受けることもあります。
そのため、公共工事に継続して参加したいなら、毎年、決算が終わるたびに経審を受け続けて、有効期限を切らさないことが非常に重要です。
まとめ:経審は公共工事への「切符」です
「経営事項審査」は、公共工事という大きなビジネスチャンスを掴むための、いわば「切符」のようなものです。
- 建設業許可を持っているか
- 毎年、決算変更届をきちんと出しているか
- 工事の記録や技術者の情報が整理されているか
- 経審の有効期限を切らさないようにしているか
これらの準備や管理は、手間がかかる上に専門的な知識も必要です。
もし「書類作成が面倒」「手続きが複雑でよく分からない」「経審の点数を上げて入札で有利になりたい」といったお悩みがあれば、いつでもマムアン行政書士事務所にご相談ください。あなたの会社が公共工事で活躍できるよう、私たちがしっかりとサポートさせていただきます!